トランプの離脱宣言を許せないフランス

マクロン大統領のツイッターでの発信には批判もある。フランス政権の中枢、エリゼ宮から母国語のフランス語ではなく英語で発信した点に対してだ。

 大統領選の決戦投票で敗れた極右政党「国民戦線」(FN)のマリーヌ・ルペン党首は早速「可哀想なフランス」とツイートした。右派政党「共和党」(IR)の支持者からも、「フランス大統領がエリゼ宮から英語で発信するとは何ごとか」「ドゴール将軍だったら絶対に行わない愚挙」といった批判が寄せられた。LRのリオネル・ルカ議員は、「エマニュエル・マクロンは米国資本主義の言葉で抵抗を呼びかけた」とカンカンだ。

 フランスは、2015年12月に首都パリで第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され「パリ協定」が採択されたことに誇りを持っており、関心も高い。

 この10年来、内閣では、エネルギー環境関係の大臣が首相に次ぐナンバー2やナンバー3の地位に就いてきた。例えば2007年に誕生したサルコジ政権では、大物のアラン・ジュペ元首相が開発・エネルギー・運輸相(国務相)として入閣。オランド政権でも、オランド氏の長年の同居人だったセゴネール・ロワイヤル氏ら大物政治家が環境、エネルギー関係の大臣として内閣で上位の地位を占めてきた。

 また、5月に発足したマクロン新政権でも、環境運動家で元人気テレビ司会者兼製作者のニコラ・ユロ氏が、首相、内相に次ぐナンバー3の「環境移行連帯相(国務大臣-副首相)」に就任して話題を呼んだばかりだ。

 こうした背景があるだけに、フランスとしてはトランプ大統領の「パリ協定」離脱宣言は決して許せないというわけだ。

マクロン大統領のツイートの「大ヒット」に気を良くしたエリゼ宮は6月8日、声名を発表し、このスローガンの公式サイトの創設と、地球温暖化防止に向けて世界的規模で訴えていくことを決めたと述べた。

マクロン大統領のツイートのおかげもあってか、最新の各種世論調査によると、6月11、18日に行われる総選挙(議席定数577)では、マクロン大統領の母体政党「共和国前進」の候補者が過半数を獲得するだろうとの予測が出ている。大統領選を頂点に下火になるとの観測もあった「マクロン旋風」は、まだ続きそうだ。